わたしは病院で数年間働いたあと、有料老人ホームへ転職し、今も施設看護師として働いています。「病院以外で働いてみたいけれど、施設の看護師は実際どうなのだろう」と迷っている方へ、働いて感じたことをそのまま書きます。施設は種類も規模もさまざまなので、あくまでわたしが働いた一施設での体験として読んでください。
- きっかけは、単発の派遣バイトだった
- 有料老人ホームを選んだ理由
- 1. 想像とのギャップは小さかった。でも頼られる場面は多い
- 2. 施設は生活の場なので、時間へのこだわりがある
- 3. 介護職との連携が、仕事の土台になる
- 4. 夜勤の負担は、設備によって大きく変わる
- 5. 一人ひとりと、しっかり関われる
- 施設看護が合うと思う人
- 施設看護をしんどいと感じるかもしれない人
- まとめ
きっかけは、単発の派遣バイトだった
正直に言うと、最初から「施設で働きたい」と思っていたわけではありませんでした。きっかけは、単発の派遣バイトです。
休みの日に、いろいろな施設で一日だけ働く生活をしばらく続けていました。小規模多機能型、有料老人ホーム、デイサービスなど、行く先々で雰囲気も業務内容も違います。最初は「知らない場所で一人で働くのは怖い」と思っていましたが、何度か経験するうちに感覚が変わってきました。
病院しか知らないと、「看護師の職場は病院」という前提が自分のなかにできてしまいます。でも、実際に足を運んでみると、病院とはまったく違うペースでも、看護師として必要とされる現場がありました。そのことを、頭ではなく体感として分かるようになりました。
「病院ではなく、施設で働くのもありだな」と思えたのは、この単発バイトの経験があったからです。施設で働く知り合いから話を聞いていたことも、選択肢を広げるきっかけになりました。
有料老人ホームを選んだ理由
派遣でいろいろな施設を見たうえで、最終的に有料老人ホームを選びました。決め手になったのは、正直に言えば条件面です。給与や休日などの待遇と、通勤のしやすさが自分の希望に合っていたことが大きかったです。
転職活動では転職エージェントを使い、希望条件を伝えたうえで、当てはまる施設をいくつか選んでもらいました。自分一人で求人サイトを見ていたら、おそらく今の職場は見つけられなかったと思います。
施設の求人は数が多いぶん、どこがどう違うのかを外から判断しにくいものです。条件を絞って紹介してもらえたことは助かりました。
「やりがいで選ぶべきでは」と思われるかもしれませんが、わたしは働き続けられるかどうかのほうが大切だと考えています。例えば、通勤に片道1時間かかる職場は、仕事内容がどれだけよくても、いつか苦しくなる気がしていました。通勤のしやすさも、わたしにとっては重要な条件でした。
1. 想像とのギャップは小さかった。でも頼られる場面は多い
入職前に想像していた施設看護と、実際に働いてみた施設看護。その二つのあいだに、大きなずれはありませんでした。派遣であらかじめ現場を見ていたからだと思います。
ただ、一日だけ手伝いに行くことと、その施設の職員として働き続けることでは違う点がありました。それが、頼られる場面の多さです。
病院には看護師が多く、判断に迷ったときは、隣にいる先輩へ「これをどう思いますか」と聞ける環境が当たり前にありました。医師も同じ病院内にいます。
施設は看護師の人数が少なく、日中に何かあったとき、まず看護師へ声がかかります。介護職の方から「今日は少し様子が違う」と相談されたら、その場で状態を確認し、次の動きを考えることになります。
これを「責任が重くてつらい」と感じるか、「任せてもらえてやりがいがある」と感じるかは、人によると思います。わたしも最初は少しプレッシャーを感じましたが、どちらかといえば後者でした。緊張感はありつつも、責任を果たす充実感がありました。
2. 施設は生活の場なので、時間へのこだわりがある
施設で働き始めて、いちばん病院との違いを感じたのはここかもしれません。
例えば、「8時30分にお茶を持ってきてほしい」という利用者さんがいました。9時ではなく、8時30分です。その方にとっては長年続けてきた生活のリズムであり、崩されると一日の調子が変わってしまうのかもしれません。
朝刊を6時30分以降に持ってきてほしいという方もいました。それより早く持っていくと、怒られることもあります。
病院は治療の場なので、生活を治療のスケジュールへ合わせる形になります。でも、施設は生活の場です。ここで暮らしている方たちがいて、わたしたちはその暮らしのなかへ入っていく側になります。
一人ひとりの生活パターンへ合わせることが、業務の一部として組み込まれています。最初は「そこまで細かく対応するのか」と思う場面もありました。
ただ、こうした部分の多くは介護職の方々が受け持ってくれるため、看護師がすべてを抱えるわけではありません。そのため、わたしにとって大きな不安にはなりませんでした。
3. 介護職との連携が、仕事の土台になる
病院にいたころ、他職種との連携といえば、医師や理学療法士、言語聴覚士、薬剤師などが中心でした。施設でいちばん近くにいるのは、介護職の方です。
利用者さんの日常をいちばんよく見ているのは、介護職の方たちです。食事の様子、歩き方、機嫌、昨日との違い。看護師がバイタルサインを測りに行く数分間より、はるかに多くの情報を持っています。
そのため、情報は記録を読むだけでなく、直接の会話から拾うことが多くなります。「最近どうですか」と聞いて返ってくる一言が、体調変化に気づくきっかけになることもあります。
逆に言えば、この関係がうまくいかないと、施設の看護師はかなり動きにくくなると思います。利用者さんの日常を支える仕事に、看護師と介護職の上下関係はありません。それぞれの立場から得た情報をつなぐことが大切です。
4. 夜勤の負担は、設備によって大きく変わる
施設の夜勤と聞くと、「一人で何十人も見るなんて無理」と思う方もいるかもしれません。わたしも最初はそう思っていました。
わたしが働いている施設には、「眠りSCAN」という見守りセンサーが入っています。ベッド上での動きや起き上がり、睡眠状況、バイタルサインなどをモニターで確認できます。
この設備があるかどうかで、夜勤の中身はかなり変わります。センサーがなければ、決まった時間に全室を回り、一人ずつ呼吸や様子を確認することになります。センサーがあると必要な場所に絞って動けるため、巡視の負担は軽減されています。
とはいえ、「夜勤がとても楽」というわけではありません。夜間に何かあれば、その場にいる看護師が状態を見て、次の動きを判断することになります。
ただ、「施設の夜勤は絶対にきつい」と一括りにするのも違うと思っています。設備が整っているかどうかは見落としやすいものですが、見学のときに確認する価値があります。
巡視回数も、1時間に1回、2時間に1回、3時間に1回など、施設によって異なります。特に見守りセンサーがない施設では、夜間の巡視回数も重要な確認項目だと思います。
5. 一人ひとりと、しっかり関われる
わたしが「ここは自分に合っている」と感じるのは、時間の流れがゆったりしているところです。
病院にいたころは、常に次の業務が控えていました。目の前の患者さんと話していても、頭の片隅では時計を見ている。それが日常でした。
施設では、同じ方と何か月も、長い人とは何年も関わります。名前も、好きな話題も、機嫌が悪くなるタイミングもだんだん分かってきます。だからこそ、「今日はいつもと違う」と気づけることがあります。
派手なやりがいがあるわけではありません。ただ、毎日顔を合わせ、少しずつ関係ができていく感覚は、病院ではなかなか味わえなかったものです。
施設看護が合うと思う人
あくまで、わたしが働いて感じたことです。施設看護が合うと思うのは、次のような人です。
- 同じ人と長く関わることに面白さを感じる人
- ゆったりした時間の流れが苦にならない人
- 医療処置だけでなく、生活に根差した看護をしたい人
施設看護をしんどいと感じるかもしれない人
一方で、次のような人は施設看護に物足りなさや不安を感じる可能性があります。
- 次々に医療処置を行う感覚が好きな人
- 相談できる看護師がすぐそばにいないと不安な人
- 医療技術をさらに増やして学んでいきたい人
まとめ
病院から有料老人ホームへ移るきっかけになったのは、単発の派遣バイトと、施設で働く知り合いから聞いた話でした。職場選びの決め手は、待遇や通勤のしやすさなどの条件面です。
入職後は、あらかじめ施設を見ていたため想像との大きなずれはありませんでした。ただ、看護師が少ないぶん頼られる場面が多く、生活の場ならではの関わり方がありました。介護職の方との連携も、仕事の大切な土台です。
夜勤の負担は、見守りセンサーなどの設備や巡視回数によっても変わります。夜勤がある施設を検討するなら、見学や面接で確認しておきたいポイントです。
施設は種類も働き方も幅広いため、この記事の内容がそのまま当てはまる職場ばかりではありません。自分で探しきれないときは、希望条件を整理したうえで、転職エージェントなどから情報を集める方法もあります。